平日の朝、家にいるときは、子どもたちの宿題に含まれている音読の聞き役を務めることになる。教科書のときもあれば、自分の好きな本をピックアップするときもあるようだ。いつもボーっとしながら聴いているので、きょうは長男の宿題が片付いたあとに私が読むのも聴いてもらうことにした。で、たまたま手元にあった「ランボウ全詩」から適当に選んだのが「轍」。タイトルからして小学校4年生には読めないよなあ、と思いつつ。いきなり漢字多いな・・・靄ってどう読むんだっけ?ああ「もや」だ。といったようなことを、読み上げながら、頭の中で並列処理していく。もちろん初見だが、こちとらいいとこ見せたいばっかりに脳みそフル回転、短い作品だけどけっこうな脳力が必要だった。なんとかつっかえることもなく読み終えることができたが、聴き終わった長男は「よく分からない」、当たり前だよな。ランボウのイリュミナシヨンってたぶん古地図みたいなもんで、いまの子どもたちが興味を持つにはハードル高すぎなのかも、あ、オレにとってもそう。いちおう「轍」の意味だけは説明しておいたが。
粟津則雄翻訳のランボウはよくよく読んでいくとちょっと凝った語句が多い。「轍」だけでも、さっきの「靄」、まあこれは読めるかもしれないが自分じゃ書けない部類。「夢幻劇」というのは多分夢のなかの劇?「疾駆」意味は分かるけど使わないよなあ。「曲馬」曲芸をする馬、サーカス団にいるのかも。ほかにも分かりそうで分からない言葉が多い。「止め縄」、「牧人劇」、「夜間用の幌をかけた柩」、「前立を立て」、「だく足」などなど。短い詩のなかにはたくさんの象徴的な語句が埋め込まれてるのを、粟津が豊かな日本語に変換しているというわけだ。100年以上前の作品だけど、「古地図」を読むように、そういった言葉を手がかりに読み解いていくのが楽しみ方なのだろう。だから、あーめんどくせーなーとか思った時点で負けである。ヘラブナ釣りと同じ。といってもやったことないが。むろん古地図なんて手にしたこともない、すべて想像にすぎない。勝ち負けなんてどーでもよいのじゃ。
でもイリュミナシヨンだからねー。100年以上前のイメージを伝えることができる、という可能性がすごいのか。フランス語で聴いたら音がかっこいいのかもしれないし。だいたい意味よりも、音響というかサウンド派なのだ、わたしは。ということでフランス語音声ファイルを探し出して聴いてみたけど、100年前の映像は残念ながら見えてこなかった。
むしろ、グーグルの翻訳サービスによる日本語訳がファンキーで秀逸、気に入った。以下「轍」の訳。
夏の夜明けの葉とはガスや公園のこのコーナーのノイズと、右の轍のついた道路盛土呼び起こす高速マイルのウェットその代わりに紫色の影を残した。 パレードféeries 。 実際:戦車を全速力で20サーカスの馬と子供と男性は、ほとんどの牛の発見金色の見事な木の棒や色のファブリック、動物ロード; – 20車両バンプ、テイルズ古い砦やコーチと子供attifésでいっぱいの郊外の田園と花。煙夜の天蓋の下で-棺黒檀も上昇し、回転する大規模な青と黒馬繋駕速歩レース。
ね、何だか新鮮なイメージが涌いてくる。とくに「動物ロード; – 20車両バンプ」って何のことかさっぱり分からないけど、ぶっ飛んでる感じがステキ。こっちのほうがランボウの見てたものに近いんじゃなかろうかとさえ思う。すごいぞグーグル翻訳。
最後にセイゴウの熱い、というか暑苦しいランボウに関するコラムご紹介。
via 松岡正剛の千夜千冊
アルチュール・ランボオ 『イリュミナシオン』 1951 金子光晴 訳 角川文庫
Arthur Rimbaud : Les Illuminations 1875