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戸を開けて、積み重なった本の匂いを嗅ぐ。駿河台の予備校に通っていた高校生だったときには、神保町の古本街をふらふらするのが好きだった、いや今でも好きだ。ひょっとすると、こんなことすら失われていく体験なのかもしれない・・というのは大げさだけど、私自身はすっかりご無沙汰しているのは間違いない。といっても懇意な店主と幻の本について談笑するとか、そんなわけなく、だいたいは店の外に置かれた10円とか100円とか、売り物じゃない値段を付けたいわゆるエサ箱を漁るのが常で、大江健三郎をコンプリートしたがるようなナイーブな高校生だったなあ。その後、南の島へ初めて旅行するときに持っていったのが「万延元年のフットボール」、分かりにくい小説を読んでいる自分が気に入っていたのかもしれない。彼がノーベル文学賞を受けたときには、その作品に対する興味はすっかり失われていたが。

子どものころは500円の図書券で額面未満の本を購入すると、現金でおつりをくれた。小学生だったアタシは駄菓子買いたいばかりに、何かの機会に手にした図書券で買ったのは岩波文庫の薄いやつ、エトルリヤの壷―他五編 (1971年) (岩波文庫)とか。ちとアマゾンで調べたら、いまは古本しかなくて、しかも1000円以上するのにびつくり。やはり、欲しいとき、見つけたときに買っておくのが吉なのだ。さて、オレのエトルリアはどこにしまってあるのか・・。

http://vimeo.com/17880073