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新人として1年余り、ともに仕事を担ってきた一人の若者が、今月限りで職場を去る。同僚といっても私より一回り以上も若い前途ある若者。やんごとなき理由により、本人の意思に反しての「円満退社」である。夜勤明けの引継ぎが終わって、同僚として最後の会話を交わすと、気のせいか彼の目がウルウルしているようにも見えたが、気のせいか。

彼にはずいぶんと偉そうなこと、厳しいことを言ったし、腹も立てたが、性格的には何の問題もない、と思う。仕事の仲間でなければもっとお互いの理解を深められた可能性もあっただろう。派遣切りという言葉が聞かれて久しい昨今、正社員でなくなる彼がどのような思いを胸に抱いているのか知る由もないが、まだ20代独身。わたしに言わせれば、今から何でもできる年齢だ。もうすでに次の職場が決まっているらしいから大きなお世話だろうが。

彼に対して厳しい態度で臨むことは、見本を示すという意味でも、自分の仕事をしっかりこなさなきゃいけないわけで、彼の存在によって気がつかされた部分も多い。そして最後の最後まで同じチームのメンバーたちと彼がどうやったら仕事を続けられるか、懸命に考え努力したし、彼も同様にベストを尽くしたと思う。しかし結果として長い目で見ればチームとしてのパフォーマンスを低下させてしまう可能性が高いという判断をせざるを得なかった。厳しいといえば厳しいし、当然といえば当たり前なことかもしれない。

ただ、いつか彼が化けてくれるんじゃないかという期待が、いつまでも消えなかった気がする。どこかで、私たちの指導、教育が十分じゃなかったのではないか、まだ改善の余地があったのではないかという思いである。ある時期、この若者を一人前にすることができたそのときには、周りにいる私たちも相当な成長を遂げているはずだと確信に似た気持ちさえあった。これって何だか宗教的だよなと思いつつ。

とはいえ、世の中何がどう転ぶか分からんし、彼が世界的な成功を収めないなんて誰も明言できない。そうじゃなきゃオレだってやってられない。