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クリスマスの夜にワイン呑みすぎて、子どもたちより早く寝てしまった。翌朝6時前に目が覚めて、食卓には昨夜の飲み残しのボトルが寂しそうにたたずんでいるので、せっかくだからと、お湯で薄めて飲みながら、近所の古本屋にて300円で買っておいた山中貞雄の「人情紙風船」DVDを観る。眠くなったら二度寝でも、と思ってたのとはうらはらにドンドン引き込まれ、気がついたら子どもたちが起き出してきたので、流れで一緒に朝食。ツマミもなかったし、腹減ってたのでちょうどよかった。

アタシが言うまでもないですが、すばらしいです。もちろん人情紙風船の方です。映像の粗さは仕方ないとしても、とても1937年制作とは思えません。ついでにこれが山中貞雄28歳、しかも結果的に最後の作品となってしまったいうのにもうならされました。長屋の宴会で住人たちが刺身を食べるシーンには、時代考証的に??でしたが、そんなことどーでもいいことです。こんなサイトが作られるのも納得できます。この才能が戦争によって失われたのは、大きな損失だったに違いありません。

図書館の子ども向けコーナーに行くと、現代語訳された古典が結構あって、最近はここからテキトーに選ぶことも多いです。そんな中、決定版 心をそだてる はじめての落語101 (決定版101シリーズ)という、子どもたちのために翻案してある古典のスタンダードが101篇。これすごく良かった。金原端人ほか二人の翻訳家とイラストレーターで取り組んだプロジェクト。いってみれば有名小説ののあらすじ集みたいなものだけれど、実際子どもたちのために朗読してたら爆笑してしまい続行不能となったネタもあり、あなどれない。もともと筑摩文庫の落語シリーズに始まって、最近だと「談志の落語」まで、じっさいに高座に足を運ぶ前にテキストで満足してしまうアタクシが言うのもどうかと思うが、日本の誇る話芸のエキスを子どもたちに注入するのに「はじめての落語」は適役だと思う。

古典と言えば、近松、西鶴とか紫式部など名前だけは知っているけど、読んだことがない有名作家が多いよなあとずっと気になっている。長い歴史を通じて遺されているのだから、きっと面白いに違いない。もちろん、オリジナルはかなと漢字で書かれているから読めるには読める。漢詩を読み下すよりずっと楽なはず、が、いかんせんめんどくさいので、現代語訳 曾根崎心中 (河出文庫)とか、窯変 源氏物語〈1〉新編日本古典文学全集 (66) 井原西鶴集 (1)など手にしてみて、こりゃ子どもにゃ分からんわと結論した。とにかく男女関係のもつれと柵(しがらみ)がメインのテーマなのだから。

古典に触れるのには若いときの方がいいと思うのは錯覚なのだろうか。爺になって骨董が好きになるようなものなのか。それとも青山二郎とか白州正子がおしゃれすぎるのか。