目覚めた時には既に羽田空港に着陸していた。乗客のおそらく半数以上がいなくなっている。スマホが手元にないことに気付いたが、たぶん機内のどこかにあるからいずれ見つかることだろうと冷静に(?)判断し、そのまま…

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目覚めた時には既に羽田空港に着陸していた。乗客のおそらく半数以上がいなくなっている。スマホが手元にないことに気付いたが、たぶん機内のどこかにあるからいずれ見つかることだろうと冷静に(?)判断し、そのまま飛行機を出る。もはや数え切れないほどスマホを紛失しているため、この程度で焦ったりはしない。スマホがないとそこそこ不便ではあるがほどほどになんとかなる、ということは十分に心得ている。軽度の二日酔いでぼーっとしながら電車を乗り継ぎ、自宅に帰り着いた。

ポストを覗くと、メルカリで購入した本、そしてその下には恋人に預けていた合鍵が入っていた。わたしが不在の間に自宅にやって来て、荷物を引き取って出ていったようである。デスクの上には1枚の置き手紙が残されていた。彼から送られた最後のメッセージに目を通すことに、怖さがないわけではなかった。別れの言葉はLINEで送られてきていたし、大阪へ行く夜行バスに乗る8月24日に出勤する彼を見送ったのを最後に、彼と顔を合わせることなく2人の交際関係は終わってしまったから。

だが心配は杞憂だった。書き綴られていたのは、彼がどれだけわたしのことを大好きだったかということ、本当はずっと一緒にいたいと思っていたこと、しかしそれでも、徐々に関係にヒビが入り始めていることを感じ、嫌いになってしまう前に別れる決断をしたこと、顔を合わせてしまうと決意が揺らいでしまいそうになるから、会うことなく別れを告げ、荷物を引き取っていったことだった。

どうしてこう上手くいかなくなってしまったのかと考えてももう遅い。もしあの時こうしていればと、あり得たかもしれない過去の想像をしてみても意味はない。これが本当に最後なんだという実感が湧いてきて、過剰に感傷的になり、感情のままに書き綴ってしまっただけとも思える。2年か3年もすれば、彼の横を別の誰かが占めている想像をするのも難しくはない。どうせ東京と大阪で400km以上離れて、互いに相手のことなんかちっとも思い出したりすることなく生きていくことになる。自分にそう言い聞かせて、手紙をしまった。

(2025/09/14)

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