四方田犬彦の本を読んだのはポール・ボウルズの翻訳が最初だったと思う。もういまから10年前の話で、ABC六本木の外国文学コーナーに並ぶボウルズの新装本を何度も手に取っては眺めていたのを思い出す。その後タンジールで彼の住まいを訪ねたりもしたっけ。
そこまでボウルズに夢中になったのは四方田先生に負う部分が多い。その後、しばらく彼の著作からは遠ざかっていたけど、「ハイスクール1968」で久々にその思索のルーツに触れ、さらに今回図書館で偶然「パレスチナ・ナウ」と出会った。
見たことも聞いたこともない映画に関する評論なのに、どうしてこんなに面白いのだろう。しかも重複する内容も多い。だけれども、普段パレスチナとかイスラエルという言葉からは何も想像できなかったのが、ひとつのヒントを与えてもらった。というか、やはりそうだよな・・・と合点するという感じに近い。映画というアート・フォームを通じてパレスチナ、イスラエルを考えてみると、そこにひとつのビスタが開けるのだ。スゴイ。
椹木野衣の岡本太郎論「黒い太陽と赤いカニ」に続いて、いまの私に「大当たり」が2本続いた。