はじめてアトム・エゴヤンは、98年の春セビージャの映画館で観た「スウィート・ヒアアフター」だった。2ヶ月くらいスペインに滞在していたとき暇つぶしに。スペイン語字幕だったと思う。実はスペインで上映される外国映画が、ほとんど吹き替えバージョンなのを知らずにマドリッドで「LAコンフィデンシャル」に行き、あらら全員スペイン語でしゃべっている・・・という苦い経験をしていたので、このときは向こうの「ぴあ」みたいな雑誌でちゃんと調べていったのを覚えている。
「秘密のかけら」の前作にあたるのが、「アララトの聖母」。だいぶ前から手元にあったのだけれど、パッケージのデザインが重々しくて後回しにしていた。見た後に思ったのが、DVD表紙にも登場している母親役の女優の濃すぎる存在感。とにかくウザイ。そういう演出なのかも知れないけど、また観たいとは思わなかった。
自身アルメリアの出自を持つ監督の力作といえば、そうだろう。緻密だし、完璧に近いし、登場人物の関係などもすごく考えられている。重すぎるテーマのシンボルとしてのさまざまな人間関係のハブとなる母親役には、まさにぴったりの配役。しかしその重さゆえ、彼女のシーンになると映画は沈滞しテンポ感が悪くなるような気がした。私はもうちょっとバランス感がほしいなあ。
ちなみに「LAコンフィデンシャル」は、いまだに英語バージョンで観ていないので、わたしの印象はかなり珍妙なままだ。