dream voice

徳川夢声のくらがり二十年で一番印象に残ったところ。はじめての映画館経営に四苦八苦する中、糖尿病で入院を余儀なくされた夢声がポツリとつぶやく。

おまけに、退院すると間もなく、可愛い盛りの娘を、消化不良と麻疹(はしか)の合併症で亡くして了った。豈(あ)に飲まざるを得んやデアル。

全編これ軽妙洒脱な文章が綴られていくうち、突然でてくるこの文章にびっくらこいた。現代に比べると、昔は子どもが亡くなることが多かったらしいが、それでも自分の子どもがデアル、とは。逆にそのインパクトの強烈さを感じてしまった。涙で語るのではなく、笑い顔で言うからホントの悲しみが伝わるのか。

生きのびろ! 生きづらい世界を変える8人のやり方雨宮処凜の本は初めて。同時期に平川克美の移行期的混乱―経済成長神話の終わりを読んでいたので、期せずして、この困難な時代を生き抜くためのヒントを、異なる視点から語った本をほぼ平行して眺めていたことになる。そして、これは一緒に読まれるべき本たちだと思った。平川の本だけ読んでも、じゃあ具体的にどう生きりゃいいのよ、という疑問が出てくるし、雨宮本だけでも、何だみんな好きなことやって生きられていいね、てなことになりそう。もしくは原因と結果というべきか。

そして、アタシは平川の本にとても感銘を受けてしまった。経済成長神話の終わりを説いているが、その姿勢はつねにポジティブなのだ。けっして安易な希望的観測並んでいるわけではない。高齢者医療に関する記述など読むと、お先真っ暗としか思えない。だが、それでも豊かに生きる方法はあるはず、と。