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AIチップを作るには、ガラスの表面を髪の毛の数万分の1の精度で磨く工程が必要です。その研磨に長年使われてきたのが、セリウムという希少鉱物の酸化物です。
問題はその産出と精製の約9割を中国が握っていることです。日本のメーカーは必要な量を調達できるかどうかを、毎年、中国の政策判断次第で確認しなければならない立場に置かれてきました。
中国は2025年10月、このレアアースを含む輸出管理を大幅に強化すると発表しました。米中間の首脳会談を経て、2026年11月10日まで一時停止されています。停止であり、撤廃ではありません。
ノリタケが今回発表したのは、セリウム系研磨材を大幅に減らし、水だけで半導体用ガラス基板を研磨できるパッドです。名古屋に本社を持つ同社は、食器メーカーとして知られていますが、実態はセラミックス技術を核とした精密工具の開発企業であり、SiC半導体向けの研磨工具ではすでに加工時間を従来比約6割削減した実績があります。
AI向け半導体の需要が拡大する中、ガラス基板そのものの供給がボトルネックになりつつあります。2026年初頭には米半導体大手がガラス基板コア材の供給不足を理由に調達先の変更を通知したという報告も出ています。磨く工程が止まれば、基板が揃っても製造ラインは動きません。
この技術の意味を一言で言えば、「研磨工程を中国のレアアース政策から切り離す」ことです。技術的には研磨速度や精度が従来のセリアCMPと同水準かどうかの検証はこれからです。しかし方向性は明確です。半導体サプライチェーンの上流工程において、特定国の政策判断に依存しない製造基盤を作る動きが、日本の素材・工具メーカー各社で同時に加速しています。
ノリタケの今回の発表は、それを食器メーカーのブランドで可視化した点に意味があります。「半導体は遠い話」という感覚と実態の間にある距離を、この1枚のニュースは縮めています。

