“わたしは、実は持ち合わせていない勇気を人に与え、この心にはない希望を吹き込むことができる。また、自分ではよく分からぬことを、或いは垣間見ただけのことを学ぶ意志を人に授けることができる。詩人としてよりも友人として、わたしのことを思い出してもらいたいと考えている。ある者がダンバーやフロストの詩の一行を、或いは血を流す木、十字架を真夜中に見た男の詩をくちずさみ、この詩を最初に教えてくれたのはボルヘスだった、と思い出してもらえれば、それで十分だ。他のことはどうでもよい。わたしは一刻も早く忘れられることを望んでいる。われわれは宇宙の企図が何であるかを知らない。ただ、正しく思索し義に従って行動すれば、いまだ知られざる宇宙の企図の実現を助ける結果になるだろうと思っている。”
– J. L. ボルヘス 詩集〈幽冥礼讃〉