２００円を入れ“7”のボタンを選ぶと、コンベアーが上がって押し出されたフルーツオレを受け止める。フルーツオレってこんな味だっけ？そもそも廃盤されたんじゃなかったっけ？と湯上がりの頭で考える。一口飲んでは…

asagaquru:

２００円を入れ“7”のボタンを選ぶと、コンベアーが上がって押し出されたフルーツオレを受け止める。フルーツオレってこんな味だっけ？そもそも廃盤されたんじゃなかったっけ？と湯上がりの頭で考える。一口飲んではラベルと睨めっこする。薬のような味がする。

「こんな俺でごめんね」と言われてもなんとも思わなかった。「自分が嫌いになる」と言われて「私は好きだけどね」と口をつく。相手の欠点を知った上で穏やかに一緒に過ごせるのが愛だと思う。そもそも人間は不完全だからこそ、この世に生まれ、人生という修行をするのだと思う。完全体だったら、魂が下界に降りてくる必要なんてないし、選んで誰かと一緒にいる必要なんてない。お互い補えるからふたりでいる。自分に欠点がないと相手の欠点も許せなさそうだし。何よりふたりでいると楽しい。そんなことを伝えて、「良い人間になる努力は続けなきゃいけないけどね。でもますますいい男になっちゃうわ」と最後に付け加えて、ふたりでくすくす笑う。

1時間で上がって来ようねと言ったのに1時間半たっても弟が男湯から上がってこない。わたしがカラスの行水のように風呂が早いのと、弟は風呂が好きすぎるのが悪い。元茶道部の弟とバイク乗りの姉。周りからはよく男女逆だよねと笑われる。札幌のスーパー銭湯のやけにエアコンの効いたお食事処で20分弱ひとりでいる。ひとしきり文章を書いてまた待ちぼうける。空になった瓶を指で遊ぶ、伸びかけのショートヘアの女がいたら、それはわたしだ。