“うまいこと言え。
岩崎俊一 首都高を走っている時、アーチにかかっている交通安全標語が目に入った。 「早く帰るより 無事に帰るほうが ずっと大切」 言っている事は正しいですよね。どこも間違っていない。
では良い表現かと言われたら、良くはない。
下の句の「ずっと大切」がいかにもきれい事で、実感に乏しくて、読む者に迫って来ない。 俺ならこうは言わんぞと、よせばいいのに早速言い回しを変えてみた。 「早く帰るより 無事に帰るほうが ずっと早い」 交通事故に遭った人ならこの感覚はわかるはずだ。
その後処理は、それはそれは時間のかかる悪夢のようにめんどくさい作業である。 ガンになった人が診察を受けた。
付き添いで同行した奥さんが、担当の先生に訴えた。 「この人食欲がないものだから、食事を取らずにクッキーとかケーキとか甘いものばかり食べて困るんです」 先生は答えた。それはいけませんね、などと甘いことは言わない。ずばりこう宣告した。 「あなたの食べているもの、それ、ガンの餌ですから」 鮮やかな表現である。
聞いた本人は震えあがった。エサ!?俺はガンの育ての親か!
その日から彼はクッキーを一切口にしなくなった。 コピーライターの仕事を分解すれば、コンセプト作りと言葉探しの2つに大別される。
どちらも大事であることは言うまでもないが、特に僕は、後者の「どう言うか」こそコピーライターという仕事の真髄だと考えている。 ものは言いよう。
どんなに大事なこと、必要なことを言っていても、言いかたがつまらなければ役に立たない。
同じ中味をテーマにしても、結果は「言いかたが上手」な者の圧勝なのである。 うまいこと言え。 これが、岩崎俊一からの助言である。”? 追悼・岩崎俊一氏のコピーの作法「うまいこと言え。」 #ブレーン | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議