“三年ぐらい前に、チョッと営業でイギリスに単身赴任してた。 んで、なかなか人間関係が構築できないわ、飯は不味いわと色々上手く行ってなかった。 ある日、唯一と言って良い勢いで美味しいランチの食えるオープンカフェを見っけて、そこでよく食事してた。 それでいつもの席で何時もの様に飯食ってたら、糊のしっかり聴いたスーツを着た、目が爛々とした…っていうか、妙なオーラの出てる、骸骨みたいに細い爺さんが俺の席に着いたんだ。 んで、俺がヘッタクソな英語で、「どちらさまですか?」と言ったら、爺さんは爛々とした目を向けて、「日本人だな。」って言って、俺が「イエス」と応えると、 「日本人は素晴らしい。ティータイムが無いのは頂けないが、 仕事は素晴らしい。 君らをチャイナやコリアと見間違う愚か者もいるが、俺にはわかる。 しかしだアンタ、ホワイトカラーだな。 日本のホワイトカラーはこの辺じゃあ苦労するんだ。 そっちの大陸の馬鹿は力押しするが、日本人は優しすぎるからな。」 と、まあ大体こういうことを、アンソニーホプキンスを思わせるような、少し落ち着いた口調で一気にまくし立ててきた。 困惑したし、良い人だと思ったんで、名前も結局知らなかったけど、その後もカフェに行くと二分の一ぐらいの確立であって話をしてた。 本当に妙な人で良い人だった。紅茶に砂糖がドッパドッパ入るし、それに良く喋るし、毎回の様に何かささやかなテーブルマジックみたいな事をやって俺を驚かせてた。 その爺さんと盛り上がった話をしてる常連として、カフェのウェイトレスさんとかとも仲良くなれたし、爺さんに対して声を掛ける人も多くて、その人と交友をもったりで、 イギリスにおける人間関係の幅が大きく広がって、んで、日本人が使うと喜ばれるイギリスの諺とかも教えて貰って、仕事も好調になった。 結局、爺さんは名前を教えてくれなかったけど、最後に俺に、「いいかジュン(俺)、俺は日本人が大好きだが、 お前らはもうちょい余裕と自信を持つんだ。 余裕を持って背筋はって、かっこつけてみな。 お前らも俺らと似てるんだから。」と、激励してくれた。”