February 2024 – Page 47 – weblog : nozacs

ether2001:

御茶ノ水にある山の上ホテルのラウンジBARでふたりで呑んだあるとき、佐々木守先生は私に「岩佐君、ジャミラが正しいと思っちゃいけないよ。彼の正義を疑ってほしい」と、やや唐突に言われました。私が「どういうことですか？」と、申し上げると佐々木先生はニッコリ笑われて、こう仰いました。「僕は基本的に、被差別者側視点に立つことにしている。被差別者は、罪のいかんにかかわらず、差別されるいわれはない、というのが僕のスタンス。だからジャミラの話にしても、イデを通して僕の考えを伝えたわけだけど、それはあくまでも僕自身の考え。観ている君たちには、あのイデの言葉も疑ってほしい。疑うという言い方がおかしければ疑問を持ってほしい。僕は昭和20年８月15日の敗戦の日に、日本はこれからどうなっちゃうんだろう？日本はもうおしまいなのかな？と、本気で心配した。ところがGHQが持ち込んだ新しい（戦後）民主主義は、僕にとってかつてない居心地のいいものだった。パーッと一気に世界が開けた感じがした。今までの?天皇万歳!?とか言っていた世界は一体なんだったのか？……以来僕は、その時々で?正しい?とされている考え方やスタンスを常に疑うようになった。だから君たちにも、本当にジャミラはかわいそうだったのか？被害者だったのか？疑問を持ってほしい。終戦直後の価値観のように、ジャミラは間違っていた、と、いきなりひっくり返る日が来るかもしれない。僕があの話を書いたのは、気の毒なジャミラに感情移入してほしいからじゃなく、?物事は一方向からでは真実は見えて来ない、あらゆる視点から俯瞰しないと真実は見えない?ということだし、?真実（正義）は決してひとつではない?ということなんだ」以上です。私には忘れられない夜になりました。（取材及びコメント引用　岩佐陽一【BAD TASTE】）