“ある日ジョージは朝刊に奇妙な広告が載っているのを見つけた。 「ランボルギーニヴェネーノの中古車を50ドルでお売りします」 ランボルギーニヴェネーノと言えば400万ドルほどする世界一の高級車である。 ジョージは、どんなに酷い状態なら50ドルという値が付くのだろうと興味を持ち、 広告主に電話を入れた。約束の日時に先方の家に着くと、そこは今まで見たことも ないような大豪邸だった。屋敷に招き入れられたジョージは、広告主であるという 中年の女性としばらくたわいもない会話をした後に言った。 「そのランボルギーニヴェネーノを見せて頂きたいのですが」 するとその女性は体育館ほどもある車庫にジョージを連れて行った。そこには 世界中の名車がずらりと並び、その一番奥にランボルギーニヴェネーノが置いてあった。 ジョージの予想とは裏腹に、車は最高のコンディションで、新車同様と言える状態だった。 事情を理解できないジョージは、破格の安値の理由を女性に尋ねた。すると彼女は 微笑みながら一通の手紙をジョージに見せた。それは女性の夫からの手紙だった。 「親愛なる我妻バネッサへ。何も告げずにとつぜん家を出てしまって済まなかった。 僕はもう疲れてしまったのだ。この40年、僕は働きづめだった。おかげで会社は大成功し、 僕は国でも一、二を争う富豪になり、何でも手に入った。ただひとつ、心から愛せる女性以外は。 君とは30歳で政略的に結婚してから、一度も幸せを感じたことはない。君とのセックスは苦痛だった。 子供達もみな成人した今、僕はすべてを捨てて、最愛の女性と二人で暮らしていくことに決めた。 君を裏切ってしまって申し訳ない。だから僕は、会社も家も財産も、すべてを君に遺していく。 ただひとつだけお願いがある。去年購入したランボルギーニヴェネーノを売却して、その代金だけを 僕の口座に振り込んで欲しい。よろしく頼む。ウィリアムより」”