私は大人じゃないよ
こどものうるんだ瞳を見ると、何か期待をされているのではと思ってすごくすごく不安になる。少女は私の目を見ることはなく、手元にある文字の並んだページを見つめて、これは?これは?と聞いてくる。石田衣良を読んでるなんて死んでも言えない。
知らないから知ろうとして、買った本。それくらい君のことをもっと知りたくてたまらなかった。ただ悪足掻きをするための本。君には死んでも言えない。君のことが好きだったってこと。痛いほど伝えたはずだった。伝わるためにあってほしいのに。その言葉は私にとって、君のためだけにある言葉なのに。
携帯を持つ手すら重くて、小説を読んでいる時間だけは君といられる気がしている。そのために読んでいるなんて死んでも言えない。いっそ死んでしまえ。死んでもっかい、君を忘れて生きていたいよ。でも、だから、君がいた、私といた事実はあっていいよ。それだけが、死んだ私の唯一の秘密であって、証明。
少女、あなたはほんとうに賢い。ツインテールでわからなくなっているけど、きっと私よりは器用に生きている。私もツインテールをしたかった。これも親のエゴだと思うとすごいな。私もそうだった。そうだったのかもしれない。君もそうか。そうじゃない、私のエゴで生きてほしい。そんな言葉、君以外に言いたくないし、私だって可能であれば君のエゴでありたい。意味わかんないならいっそ伝わるな。これは今なら言える、私なりの告白。一生もののここだけの秘密。