サニー、どうか
どうしようもない夏が過ぎることを待っている。べつに何をしたって何もしなくたって夏は過ぎるし秋は来るしセミは死ぬけれど、片付かない部屋を片付けて、月7000円の会費を払っているジムには気が向いたら行き、きみが読んだと言っていた本をわざわざ探して、どうしようもない夏のどうしようもなさを消化するしかない。一週間ぶりくらいに自分の部屋に帰ってきたら窓が開けっぱなしだった。バルコニーも出窓もないから悪いことが起こるわけではないけれど、虫がバチバチと照明にぶつかって飛ぶようになった。フィルムカメラで撮らなきゃいけない景色はないし、日記に書き留めなきゃならない出来事もないけれど、iPhoneの容量を超えてもいつか気が向いたときに誰かに伝えたくなる思い出があるかもしれなくて、わたしはそれを今のうちは残すと決めている。
地下鉄大通駅、改札前で抱き合うふたつの体温は、車両が起こす風なんかに負けないで!きみたちには平熱すらも似合わない。ずっと熱くてずっと悪寒がする、脈絡もなく脈を測って加速していけ!
なんだか眠れないな、となりにあなたがいなくっちゃ、何も始まらないのに何かが終わっていく。長いと思った夜でさえも30秒のループの中にいつのまにか溶けてなくなっていく。気づけば外は明るくて、もう寝なきゃっていいながらまだ寝たくないを隠しているね。もう夏至は過ぎたよ、短くなる太陽をいろんなところへ一緒に見に行こうね。