引っ越してからもう2週間経ってしまった。まだ本は殆ど段ボールに詰め込まれたままだし、家具の配置も何となく落ち着かない。居間のカーテンなど寸足らずなのだけれど、まあ、ともかく、日々暮らしている。新しい部屋も、暮らしやすいと思う。外観は古いけど内装は綺麗だし、お風呂の排水口も、まえより掃除しやすい。ベランダの、洗濯物干しをかけるところだけがバリバリに劣化していて、ちょっと面白いし、それはそれで、なんとなく愛おしい。
同じ職場の方が急に亡くなってしまって、お通夜に行った。再雇用のパートで来てくれていた人で、たくさん話したことはないけれど、本当にいい方が来てくれてよかったねと、たぶん、皆に思われていたひとだった。不慮の事故で、お棺のなかの、いつもニコニコされていた顔がアザだらけになっていて、泣いた。会社は諸事情で生花の持ち込みが本当は禁止されていて、でも、ほかの部署の人に見えないように課長が段ボールでバリケードを作って、机の上に数日間だけこっそりお花を置いていた。何があるかわからない。人生。たしかに生きねばならない。
7月になった。
そういえば浴室乾燥機は弱すぎて、脱衣所に除湿器を持ち込んで洗濯物を乾かしている。いつの間にか梅雨に入ったようで、空はしばしばどんよりとした色をしている。梅雨は、わたしは嫌いではない。大雨が災害にならなければだけれど、秋の次に好きなぐらいかもしれない。むかし、中学校の家庭科室はふるい別棟で、暑くて、窓を開けて、まっすぐ降り落つ雨を見ていた記憶がある。いや、あれは、高校だっただろうか? むかしのきおくは、だんだんと溶けて混ざっていく。これから歳を重ねれば、もっとそうだろう。
ここ一月ほどは、小説ではない文章を書いていた。つぎの一月は、また小説を書こうと思う。