old story

このごろは涼しくなってずいぶん過ごしやすい。朝、犬の散歩をしていてお隣さんと偶然出会って「涼しくなりましたね」と挨拶され、寝ぼけて「よかったですね」とワケ分からん受け答えをしながら、しばらくしてひとり恥ずかしい思いしたりしてる。いろいろあるねー犬の散歩してても。今日は待ち時間があって、街頭のベンチで本を読んでいたけど心地よいばかり。1年中こんな気候だと採れる作物も変わるだろうし、それにつれて食べるものも変わる、きっと国民性も変わるに違いない。

Kai
Kai

日本の国民性を形作ってきた古典といえる作品を現代語訳したシリーズが河出文庫から出ている。三鷹駅前のベンチできょう読んでいたのは近松門左衛門の巻。「曽根崎心中」とか「冥途の飛脚」など、これまで名前だけは知っていたけど読んだことはなかった。だが、読み出すととまらない感じで、どことなく源氏物語と通ずるものがある。表現があからさまでないだけで、かなりエグい話ばっかりなところも。300年近く前に書かれているにもかかわらず、現代語訳のおかげで、すーっと読めてしまう。もちろん時おり挿入される謡の言葉には意味が分からず惑わされることもある、それでもストーリーを貫く感覚というのは、時代を超えて共通のものがあるのだろう、何から何までかけ離れた現代に生まれ育っていても、本質的なところ、人と人との関係、その間にある感情、愛情を理解し、共感することができる。そういった人間の本質的な部分を汲み出すことができた稀有な作家だからこそ、近松門左衛門は継承されてきたのだと納得した。翻訳者も含めホントすごい。