ウェス・アンダーソンの「ライフ・アクアティック」は豪華キャストなのに渋い。ビル・マーレーは最近こういう演技しか見たことがないなあ。アンダーソンは1969年生まれ、すごく若いのにスタイルが出来上がっていて「天才マックス」「ロイヤル・テネンバウム」そして「アクア」と、どちらかといえばのっぺりとした、ある意味シュールな演出ばかりが印象に残るけれど、好きなヒトには堪えられない味なのだろう。わたしはもうすこし熱い感じが好き。
ということで、ようやく観たイーストウッド「恐怖のメロディ」。71年の初監督作。付録のインタビューによれば、当時脚本権を持っていたユニバーサルのLew Wassermanは、監督をやらせて欲しいと頼み込んだイーストウッドに、「どうぞご自由に、ただし金は出さん」と答えたそう。結局収益の5パーセントがイーストウッドにわたることになったものの、本人は「ノーギャラでもやっただろう」とのこと。
主人公は地元ローカル・ラジオ局でジャズ番組を担当する女好きDJ、モンタレー・ジャズ・フェスティバルのライブ会場での撮影、キャノンボール・アダレイの演奏シーン、エロル・ガーナーのMistyの権利を買い取って本人にアレンジしなおさせるなど、ジャズ愛好家として知られるイーストウッドのこだわりがスゴイ。監督デビューにしてこの傑作、ほんとうにすばらしい。