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“seiichirou: 株式会社トライテック
『日本アルミット』というハンダ・メーカーがあります。当社でも製品の製造にはアルミット製のハンダKR-19を使用していますが、この会社はもともとアルミニウム用ハンダの開発・製造のために昭和31年に作られた会社で、一時はアルミ用ハンダでは90%のシェアをもっていました。
この会社の看板商品、KR-19というハンダは、通常のハンダと成分が違います。通常のハンダには、作業性を向上させるために松ヤニに少量の塩素が混ぜられています。塩素のおかげで、ハンダ付けのときに溶けたハンダがパターンの上を流れるように広がりやすくなります。しかしこの塩素はハンダ付け後も少し残っていて、時間が経つにつれてハンダ接合部を腐蝕させるため、接触不良になってしまうのです。
KR-19はこの塩素を含んでいません。従って経年劣化も起こりにくくなっています。いまでは国内外の電気・電子機器メーカーや測定器メーカーで使われているのはもちろん、スペース・シャトルに搭載する機器の指定半田にもなっています。
日本アルミットという会社は、もともとは東京・中野の町工場でした。先代の社長と息子の現社長、それに社長の友人達だけで始めた小さな会社です。無塩素ハンダは関東精機という自動車電装部品メーカーの依頼で開発したものですが、開発当初は世界で初めての無塩素ハンダに、まず国内の自動車電装部品メーカーから注文が殺到しました.。日本製自動車が電装部品に故障が少ないのは、KR-19のおかげと言っても過言ではないそうです。
現社長のモットーは『大きいところしか相手にしない』。大きい会社が採用すればその下請けも自動的に採用してくれる、というわけです。KR-19も自動車だけでなく電機メーカーにも使ってもらおうと売り込みに回るのですが、セールスに出かけるのは大企業ばかりでした。大企業では、現場の人は優秀さをわかってくれるのですが、上に話が行くと「そんな零細企業の製品なんか信用できない。やめとけ」といわれてしまい、結局国内の大手メーカーはどこも使ってくれなかったそうです。
そこで社長は日本がダメならとアメリカに渡り、まったくの飛び込みセールスを始めます。しかもやはり大企業ばかりです。ところが手始めに訪ねたヒューズ・エアクラフト社が、あっけないほど簡単に採用してくれました。大企業だろうと町工場だろうと良いものは良い、というのはまさにアメリカ企業です。
続いてヒューレット・パッカード(HP)社を訪ねました。担当者に「ヒューズで採用してもらった」と告げると、彼はその場でヒューズの工場に電話をして具合を聞いたそうです。詳しく性能を訪ねた後、彼は「使ってみるからすぐに送ってくれ」と社長に告げました。このハンダを使わないと後悔することになる、とヒューズの技術者に言われたそうです。驚くべき単刀直入、そしてなんというフランクさでしょうか。その場でライバル会社の見知らぬ技術者に電話をして訊ねてしまうというのも驚きますが、それに正直に答えるほうも立派です。おそらく日本では考えられないことだと思います。
どこの誰だかわからない相手の持ってきたものでも、妙な先入観を持たずに、話を聞いて良いと思えば積極的に試してみる。チャンスは誰にでも平等に与えるという精神が浸透しているということでしょう。またこれがアメリカ企業の強みであり、底力だと思います。
これがきっかけで、KR-19はアメリカの航空、電子産業に次々に採用され、電子産業では上位50社のうち28社がKR-19の採用を決めました。またアメリカへの売り込みの最大の成果はスペースシャトルの電装品機器のハンダ付け用に採用されたということでしょう。
こうなってくると日本の大企業もガラリと態度が変わります。「信用できない零細企業の製品」が、スペースシャトル御用達となったとたん、松下、シャープ、キャノン、カシオなどそうそうたる企業がKR-19を使い始めました。
日本アルミットの本社が東京・代々木にあった頃は、入り口を入ったすぐのところに社長の机があったそうです。そこから中のほうへ部長、課長、係長と机が並んでいて、一番奥の、普通なら社長が座っているあたりにいるのが平社員なんだそうです。
社長曰く、「いちばん上がもっともドアに近いところにいて、お客様のご用をうけたまわる。これこそベンチャー企業のあり方です。お客様の用件を聞いて、誰が対応すればよいか、一番わかるのが社長ですから」”

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PETAPETA

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