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“感じのいい人だなと思っていた女性ライターの方がツイッターでつぶやいているのを見かけた。細かい部分は忘れてしまったけれど、それは「自律神経を整える簡単な方法」というものだった。 夜寝る前に、3つのことを紙に書き出してみる。1つ目はその日の反省。2つ目はその日にあったうれしかったこと。3つ目は翌日の目標。この順番で書くのがポイントらしい。 ただそれだけ。ただそれだけのことなんだけど、何だか心に残って、その日からやってみることにした。やってみると、あることに気付く。ここまで読んだ人は大体推測できるかもしれないが、反省と翌日の目標は書けるんだけど、「うれしかったこと」が全く書けない。うれしかったこと。うれしかったこと……。うれしかったこと? 何それ。ないってそんなの。そうそうないよ。生きててうれしいこととか。 いや、これではいかんと思い、なんとかうれしかったことを書き出そうとした。考えて考えて、書いたこと。 納豆ご飯がおいしかった。 ちっちゃい。でもたぶんそれしかない。今日のところはそれでOK。なんとかひとつうれしいことがあってよかった。それで次の日は卵かけご飯がおいしかったとか、次の日は社長(共同経営者)とけんかしなかったとか、その次の日はたい焼きがおいしかったとか。とにかく1日に1個はうれしいことを考えるようになった。ちいさなちいさなうれしいことを毎日書いた。でもこれが大きかった。それまでの私は夜寝る前に、「今日は〜〜と〜〜と〜〜がダメだった。なんでダメなんだろう。なんでできないんだろう」、それしか考えてなかった。ダメな自分のまま眠り、ダメな自分のまま起きる。今思えば明らかに毎日死んでいた。 うれしかったことを1日1回考えるようになってから数ヵ月後のこと。その日は休日で、私はよく日が当たる自分の部屋でベッドに寝転がりながら本を読んでいた。隣の部屋には一緒に暮らしていた人がいた。本を読むのに疲れて、ふと天井を見上げたとき。目に入ったのは白い天井に日の光がぱーっと差し込んでいるところ。すごくきれい。きれいだな。うれしい。きれいだからうれしい。穏やかな気持ち。 …? あれ? 私、もしかしてすごく幸せなんじゃないだろうか。こんなにいっぱい日のあたる部屋に住んでいて、休日に好きな本を読めて。 唐突に感情があふれてきて、急に自分がすごく恵まれていることに気付いた。そして周囲の人がどんなに自分に優しくしてくれていたのかに思い当たった。今までずっと自分を責めていたけど、それは自分を責めているふりだったんじゃないだろうか。責めているふりをして、誰かにもっと優しくしてもらうこと、もっと認めてもらうこと、もっと何かをしてもらうことばかり考えていた。なんで優しくしてもらおうと思っていたんだろう。もう充分なほど優しくしてもらっていたのに。築古で隙間風もある部屋の小さなベッドの上で、私は突然ものすごく幸せになった。 うれしかったことを思い出すこと、覚えておくこと、ちゃんと「うれしかった」と言うこと、伝えること。それがどんなに大切で生きていくために必要なことか。私はそれまで全然知らなかった。女性誌ではよくモデルたちが「とっても楽しかった」と言ってパーティーや旅行の様子を綴っている。女性タレントたちのブログでもそう。「楽しかった!」「ありがとう!」「みんな大好きだよ!」 昔は不思議だった。そんな楽しくないでしょ? そんなに感謝してないでしょ? そんなにみんな好きでもないでしょ? 建前だよね。大人だからね。 でも今ならわかる。彼女たちがそうやって言う理由の一つは、幸せのハードルを低くするためなのだと思う。みんなといられるだけで楽しい。集まっただけでうれしい。ケーキがかわいいから幸せ。今足りないものを見つけて気にするのではなく、今の状態こそが満たされていると気付くこと。今日も楽しかったね。明日もいいことあるといいね。「楽しかった、ありがとう」と口に出すことは、祈りに似ている。”

? 私、女性誌のキラキラ感を笑う気になれません、という話|Tamaka Ogawa|note (via clione)

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