“<6月5日>(月)
〇久しぶりにニュージーランド大使館にお呼ばれする。本国から財務省の方がみえられので、日本側のエコノミスト数名と共にランチミーティングである。
〇聞いて驚いたのだが、ニュージーランドの人口は既に500万人を越えているのだとか。なるほど、外務省データで見ても既に504万人。ワシが初めてNZを訪れた90年代半ばには、「総人口が350万人ということは、静岡県か横浜市くらいだな」と覚えたものである。それが今では福岡県(511万人)、もしくは北海道(513万人)並である。うーむ、いつの間にそんなことになったのか。
〇外務省のデータによれば、こんな風になっている。欧州系(70.2%)、マオリ系(16.5%)、太平洋島嶼国系(8.1%)、アジア系(15.1%)、その他(2.7%)(2018年国勢調査)
〇マオリ系の比率は「7人に1人程度」という記憶通りなのだが、アジア系の増え方がすさまじい。この感じで行くと、最大都市オークランドでは3人に1人くらいがアジア系になっているものと拝察する。おそらくはポリネシア系の人口も増えているのでしょうね。彼らの移住が、出生率をかさ上げしている可能性があると思う。
〇2010年に最後にかの国にわたって以来、ずっとご無沙汰が続いているので、久しぶりに聞く話にいちいち驚く。が、まあ、言われてみればそりゃそうだわな、ということが多い。
〇2020年、NZにコロナが上陸してさあ大変。インバウンドがいきなりゼロになり、経済は不況のどん底に。そこで金融・財政出動をしたところ、翌年には30年ぶりのインフレが起きてしまった。年率2%の人口増にもかかわらず、失業率はいたって低く、雇用が強いからなかなかインフレは収まらない。これは米英などアングロサクソン経済に共通する現象ですな。「日本のインフレは前年比3?4%だけど、じきに収まります」と言ったら、「ええっ、その程度?」と驚かれる。まあね、自慢じゃないですが、ウチはいまだに金融緩和をやっているくらいですから。
〇そしてミセス・ワタナベたちは、今でもせっせとNZ国債を買っているようで、為替レートはNZD高である。1NZDドル85円というのでは、なかなか海外旅行にも行けませんわな。ワシが1998年に訪れたときには、1NZDが40円でしたけど。逆にこの為替レートでは、なかなかNZの林産資源も高くて買いにくい、というのが現場の感覚ではないかと拝察する。
〇最近はNZとのご縁は薄らいでいるけれども、ワシのNZワイン贔屓は続いていて、今でもよく買っている。そんな中で、不思議でしょうがないのは、「日本人のワイナリーが5つも成功していること」である。なんでそんなことになるのか、誰か調べてほしいんですけど、こんな風になっている。
*大沢ワインズ(ホークスベイ=北島東岸)
*クスダワイン(マーチンボロー=北島南端)
*キムラセラーズ(マールボロ=南島北端)
*コヤマワインズ(ワイパラ=南島東岸)
*サトウワインズ(セントラルオタゴ=南島南端)
〇いや、ほかにもあってワシが知らないだけなのかもしれない。が、さまざまな前歴の5つの家族が、北島と南島のそれぞれ別の土地でワインづくりに挑戦し、不思議なことに全部成功している。もちろん夢破れて去った人たちも居たかもしれないが、これはもう天下の奇観と言っていいのではないか。佐藤夫妻なんて元は銀行のロンドン駐在員だし、大沢氏は滋賀県の建設業者で、55歳から海外で農地を買ってワインづくりを始めた人である。いくらNZがよそ者に優しい国でも、ちょっと打率が高すぎるのではないか。
〇ちなみに日本国内ではキムラとサトウは比較的入手しやすくて、とくにキムラセラーズのソーヴィニヨンブランはちょっとしたものである(最近、値上がりしてしまったのが痛いけど)。さらにクスダのピノノワールなんぞは、滅多なことでは手に入らない。現地での評判が良過ぎるからである。楠田氏はドイツでワインづくりを学び、「究極のピノ」を求めてNZに移住し、ワインづくりに挑戦したそうである。
〇どっかの旅行代理店で、上記5か所のワイナリーを歴訪するツァーを組んだらいいのではないかと思う。さすれば、NZの北から南までをほぼくまなく網羅することになるし、ワイン好きにとっては堪えられないツァーとなるはずである。”