nozacs: “少し前に21才の女子大生と食事をしていた時のこと。「ポケベル」の話になった。 彼女は『聞いたことはあるけど、見たことはないし、使い方も知らない』と。まあ当然だろう。…

nozacs:

“少し前に21才の女子大生と食事をしていた時のこと。「ポケベル」の話になった。 彼女は『聞いたことはあるけど、見たことはないし、使い方も知らない』と。まあ当然だろう。 「メールみたいな感じだけど、数字しか送れないんだよ。後でカタカナとかアルファベットとかも  送れるようになったんだけど、送れる文字数も10字ちょっととかだったしさ」 『マジ?それやばくない??で、送るときはそのポケベルから送るの??』 「いやいや、それ自体は受信しか出来ないから、送るときは普通の電話から。公衆電話とか」 『ちょーめんどくさくない?電話ないとこにいたら送れないじゃんw』 「たしかにw でも当時はめっちゃ便利だったし、なかなかいいもんだったよ」 『へぇ?w』 こんな感じの会話をして、久々にポケベルのことを思い出した。俺は31歳なので、ポケベル全盛期が ちょうど高校生のころ。2年生のときに付き合っていた一つ下の彼女に、連絡が取れなくて困るからと 言われて契約しに行った。東京テレメッセージの“ナージ”という横長のポケベル。 彼女はとても嬉しそうにしていて、俺と“ベル番”と交換し、その日から俺のポケベル生活が始まる。 学校の友達や、中学からの仲間でもベル持ちはもう随分多くなっていて、お互いにベル番を交換して、 必要な時にベルで連絡を取り合ったものだ。 学校にいるときは校内にある公衆電話を使ってベルを打つことしか出来ないため、休み時間になると 職員室近くにある公衆電話には必ず長蛇の列ができる。行くのが遅れると、休み時間内ではその列が 消化できず、並んだだけで終わりなんていう悲惨な人もいっぱいいた。俺は並ぶのが嫌いなので、 こっそり校舎から出て、近くの電話ボックスから送っていたけれど。 ベルがあったことで非常に助かったのは、彼氏⇔彼女が互いの家へ電話するときに、親が出てしまうという トラップにはまらなくなったことだ。事前にベルで連絡しておき、その時に電話の目の前にいるように することで、親という強固な門番をスルーすることができる。これはベル世代人なら誰もがきっと一度は 経験したことだろう。 ある日の夜、彼女と電話するかしないかというやり取りをベルで交わしていたときに、何故か彼女を 怒らせてしまった。俺はまったく怒っていないのに、文面で俺が怒っているような印象を彼女に与えて しまったようだ。 今のように文字数も打てないし、デコメどころか顔文字さえも無い時代であり、純粋にカタカナだけでは こちらの感情や思いが性格に伝わらないことがある。そのせいで上のようなことが起きてしまう。 外では公衆電話が必須だし、自宅でもなるべく親の目を盗んで電話を使わなければいけない。しかも 文字数は10字ちょっとしか使えないし、絵文字も一切無しでカタカナと英数字しか使えない。そうなると 通じ合う男女同士でさえ、意思疎通にズレが生じることもあったのだ。 だからこそ当時は、一通一通しっかりと考えて、慎重に送っていた。ましてや彼女など大事な人に対しては。 そのように一小節の重みを考えながら、ささやかなコミュニケーションを取っていた事が、今思えば本当に 懐かしく思うし、それはそれで楽しかったなと思う。今は本当に便利だし、何の不満も無いけれど、 こういう風に懐かしむことや、そこに詰まった色々なものに思いを馳せるのは、短歌や川柳や都々逸に 近いのかもしれないな、なんて思ったりもするのです。現代版の。 そして、怒ってしまった彼女とのベル履歴。 『ナンデオコッテルノ?』 「オコッテナイ ホントニ」 『サイキンキゲンワルイヨネ』 「ソンナコトナイッテ」 『アタシキライニナッタ?』 「ナンデソンナコトイウノ」 『モウイイ ワカレル』 ・・・え?なんで??(汗) こりゃまずいと焦って、次の返事がめちゃ大事だ…とか、早く返事しないと まずいぞ…でも何て送ったら…とか、必死に考えた。こんな意味わかんない流れで破局とかちょっと ねーだろとか、焦りまくって返事を送信。内容は忘れたけど…、程なくして来た彼女からのメッセージは、 『ウソ アナタノUコ』 “Uコ”というのは“優子”のことで、彼女のベル専用名。どうやらUコは俺に一杯食わせてやろうと思って、 わざとけしかけてきたのだった。もともとユーモアのある子だったけど、こんなことは初めてだったから びっくりしたのと、今で言う“ツンデレ”な子だったので、こんなことを言うなんて思わなくて、それも驚いた。 でもそれ以上に、可愛らしく思えたし、何よりもその言葉が嬉しかった。 その後は、 「イマデンワOK?」 『マッテル ハヤク』 俺は全速力で彼女の家に電話した。 たくさん障害があったし、不便なことばっかりだったけど、こんなことでも十分幸せだった。 この思い出にはポケベルが重要な役割を担っているし、だからこそ記憶にも残ってるんだと思う。 あのメールだけは一生忘れない。そしてそれを運んでくれたポケベルっていう、不便だし思うように 動いてくれない憎めないヤツがいたことも、俺はずっと忘れないだろう。”

? 女子大生にポケベルの話をしてみたら (via fishandmush)

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