Strong taste

相変わらずペギー・リーにぞっこんなのだ。1957年、デッカから再びキャピトルに戻って最初のアルバムがこの「The Man I Love」。

オーケストラ・アレンジはネルソン・リドル、指揮してるのがフランク・シナトラという、当時絶頂期にあったコンビのバックアップ。内容はといえば、これはもうペギー・ファンの試金石、じゃない踏み絵といってもいい。無理に形容すれば、全曲大トロの蜂蜜漬け。収録曲はどの曲も素晴らしい。ヴォーカルはもちろん、アレンジ、演奏、どこをとっても最高である。ただ、全体のテンポがほぼ同じ、逆ラモーンズ状態。そして一曲だけでカロリー十分なのよねー、全曲通して聴いたら鼻血を出してもおかしくない。どんな楽曲でもこなせるペギーなのに、どうしてこんなスローでしっとりした曲ばかりでアルバムを構成したのだろうか。

The Man I Love
The Man I Love

1957年といえば、エルヴィスがエド・サリバン・ショーに3回目で結局最後となる出演を果し、グレースランドの家を購入して家族で移り住んだ年でもある。ロックが鎌首をもたげてきてた、いわばミュージック・ビジネスにとって大変動期に当たる。とはいえ、実質的な売り上げでいえばシナトラの方がまだ実績があっただろうし、ましてペギーのキャピトル復帰第1弾だ。「オレがDukeなら、ペギー・リーはQueenだ」とエリントン様がおっしゃってましたが、その女王様とチンピラ番長がプロデューサーを介さず作った、いわばクリエーターが好き放題にやった、この期に及んで許されないような孤高のアルバムだった、というのが私の推測。

正直ディープ・ペギー・ファン以外にはキツイかもしれない。一番最後に聴くことをお勧めしたい。でもオレにとっては身を投げ出すほど最高に痺れる一枚、鼻血出して倒れそうなくらいだ。