歌手、ジョニー・テイラー1970年のアルバムである。96年に再発されてるから、おそらく10年ぶりくらいに私のライブラリーの中から発掘され、ハードディスクに収められた。
なかなか贅沢なセッションなのでメモっときます。バックトラックが録音されたのはマッスルショールズとスタックスの2箇所。スタックスのほうは当然のごとくMGズ参上で、マッスルショールズ側もエディ・ヒントンがリードギター、バリー・ベケットがキーボードとしてクレジットされとります。そいでもって双方にメンフィス・ホーンズが(おそらく)参加。おまけにプロデューサーはデトロイト・ソウルの御大ドン・デイビスでござる。当時の黒音楽業界超豪華キャストとでも申しましょうか。トリュフとフォアグラ、キャビアの盛り合わせ。でも、この盤そんなに知られてないし、わたしも存在を忘れてたのはなぜでしょうか。
ひとつには訴えるオーラが足りない、そんな気がします。仏作って魂入れず、とまではいかないけど、甘露が足りない。あ、でも私には堪らない名盤です。だってねえ、そりゃそうです。だから自分のライブラリーからこのCDを救出できたことが何より嬉しい、ってそんなのライブラリーと呼べるのか。いつかきちんと整理したいと思ってるのだけれど、結局全部PCにリップしたほうが楽かなとも。
そしてペギー・リーです。なんという歌声なのでしょう。このケダルイ、ヌケの悪いくぐもった感じ。もうずいぶんと彼女のCDを買ってませんでしたが、先日国立ユニオンで65年、70年に発表されたアルバムの2in1CDを見つけたので、ほんとうに久しぶりに聴いてみました。
相変わらずの唄いっぷり(当たり前ですが)に打たれました。そこで思ったのが、たいがいのPeggy Lee好きというのは、ちょっと変なんじゃないかということ。彼女の魅力じたいが、そもそも分かりにくい。人に説明するときに、ケダルさとか、ヌケの悪さとか言ってもねえ。これはもう、たとえばこの絨毯の手触りが好き、といった物理レベルでの心地よさとでも言いましょうか、あの声が鼓膜を振動させる仕方が好きなのだ、としか言いようがない。この声を見出して、それをマスプロダクションとして流通させることができたのは、プロデューサーの力量もあるでしょうが、当時のアメリカの底力なのだと思う。