池澤夏樹のエッセイに出てきたアリステア・マクラウド 「彼方なる歌に耳を澄ませよ」をここしばらく読んでる。スモーキーなスコッチってこんな味だったようなかすかな記憶。もうずいぶん飲んでないので定かでない。とても気に入ったセリフを抜書き。
誰でも、たまにはかっとなるもんさ。もう一杯、ビールを飲むとするか。人生は短いんだ、楽しまなきゃな
まったく違うカルチャー、時代のハナシだけど、人が喜び、悲しみ、家族と生き、そして死ぬというのはあまり変わってないからだろう、とても興味深い。トロントに住む長兄が荒んだアパートでひとり暮らしなのも、時代が進んで物質的な豊かさが増す一方で家族同士のやり取りはどんどん希薄になっていって、人は分かれて住む傾向が強くなっている、という著者の感覚、もしくは体験を書いているのだと思うし、それは簡単に同意できる。マクラウドは若い世代がより自由な生き方を選択できる今を否定するのではなく、それによって何を失ったかを書く。ハイランダーの故事に由来するという本作のタイトルとは反対に「大いなる喪失」なのだ、と言いたいのかな。
最近手に入れたボックスセットで聴き続けているのはDorival Caymmi。ブラジル盤なので、歌詞もアルバム解説もポルトガル語で私には分からないけれど、バイーアのMuddy Watersみたいな印象。顔も仏顔だし、マディと同じくその声はかなり深い。8月16日は彼の命日に当たる。