近所の激安スーパーでは限られた種類の商品を大量に仕入れて、安く提供してくれる。わたしは酒売り場をチェックするのだけれど、ビール以外はときどきウィスキー、ワインを買うくらいで、銘柄にはほとんど注意を払ったことがなかった。が、日本酒に限っていえばけっこういろいろあって独自ルートで仕入れたものもあるみたい。うえの写真はそのひとつ、900mlで1000円弱なので、この店では高い部類に入る。度数も20度と普通の日本酒に比べてちょっと高め。ただ味はというと、たしかにキレがあるのかもしれないが、これだったらコンビニで売ってる賀茂鶴純米の方がわたしは好き。飲み慣れてるせいもあるのだろう。人生でもっともたくさん日本酒を飲んだのは門前仲町に住んでいたとき。大坂屋という今はもう無くなってしまった酒屋の立ち飲みコーナーのメニューにあった賀茂鶴と久保田がもっとも多く頼んだ銘柄だったのだ。ひとり2杯までという制限はあったが、小銭を握りしめたオヤジたちに混じってホントによく飲んだ、懐かしい。日本酒を飲むといまだにあの店を思い出す。
橋本治の短編集「蝶のゆくえ」は前回借りて読んだ「夜」よりバラエティ感はあるものの、やっぱりどこか「不幸のカタログ」になっていて、読んでいて明るくなる本ではない。通勤電車の中で読み始めたときには、正直ちょっと気持ち悪くなったりもした。そして内田樹との対談本を読んだときに「パブリック」というキーワードが出てきたのを思い出した。橋本が他のひと(小説家)がやらないことを手がけようと突き詰めていった結果がこういう短編になっているとすると、あとはこれをどうやって咀嚼するのか、そこはあなた(読者)に任せます!ということが伝わってくる、すくなくとも私はそう感じた。「これはこう読みなさいよ」的なものは一切ない、徹底してる。だからこれを読んだあとのダウンな気持ちをどうにかするために、その意味をよーく考えなきゃならない。そういう作りになってるんだと思う。もちろん単純にストーリー展開が気になるので、読み出すと止まらない、でもエンディングで突き放される。ただ心して読めば得るものは多い、ような気がする。