Bent my ear to hear the tune and closed my eyes to see

批評という仕事

音楽が降りてくるという本を読んだ。著者は湯浅学先生。昔はミュージックマガジンやレコードコレクターズといった雑誌で彼の文章をよく読んだものだ。とくにフランク・ザッパに関する記事とかには尋常じゃないエネルギーがあふれてて、こりゃ聴かなきゃという気にさせられた。当時は彼とマーク・ラパポート氏が大のお気に入りでした。また、「幻の名盤開放同盟」のCDはJ-Waveの深夜番組で飛び道具としてたまに使わせてもらったのを覚えている、変な串かつ教室とかよくかけてたなぁ。根本敬先生を取材させてもらったときに、ご本人とすれちがった気もする。いまから20年くらい前の話だから記憶定かじゃないけど。

彼の批評については、何を言いたいのか分からない、といったコメントも2ちゃんなどで散見するが、わたしは彼の文章が好きだったし、今でも好きだ。なぜなら、たとえ書いてあることが理解できないときがあっても、そこには全身全霊を込めた覚悟だけは感じとることができるから。(こんなこと書くと、もろ電波系と言われてしまうか・・)だから仮に聴いたことのない音楽についての文章であっても、行間からおぼろげに音のイメージが立ち上がってくるほどの力がある。わたしがミュージシャンだったら、こういう人に自分の作った音楽について書いて欲しいと思うし、それを目標に音楽を作りたいと思うだろう。そして、こういった気持ちを喚起するというのが、本当の意味での批評なんだと今ごろ気づいた。彼はその点で稀有な批評家であることを再確認できる本ですじゃ。

March 7, 2012   No Comments

Mort à crédit

セリーヌの「夜の果てへの旅」はすごく面白かったので、続いて「なしくずしの死」を読もうと思い書店で文庫版を手にとってみたが、どうも読む気がわかず、棚に戻してしまう。そんなことを何度か繰り返し、だったらと図書館で国書刊行会版を借りてみたら、なんとまあステキ。フォントなのか組み方なのか、装丁なのか、翻訳は同じ高坂和彦さんなので、たぶんそういったパッケージの仕方がアタシの心を鷲掴み。30年以上前の図書館本はボロボロでしたが、それが逆に味なのかも。で、アマゾンで探してみたら984円で中古が出てたので迷わず注文。コレ新品だと5000円、河出文庫でも1000円以上するから・・と自分に言い聞かせてた。果たしてどんな状態で到着するのか。

1/22追記

状態の良いブツが届きました

book

Mort à crédit

January 16, 2012   No Comments

読書メモ

ストロース大先生の悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)。まるでピンチョンの小説みたいです。ル・クレジオの悪魔祓い (岩波文庫)、ドアノーの不完全なレンズで―回想と肖像など、最近読んだフランスの作家たちの文章はどれもまるで詩のよう。レダのパリの廃墟などもそうだけど、堀江敏幸の翻訳が素敵です。

仲正昌樹の解説本はどれもすばらしいけれど、今回のヴァルター・ベンヤミン――「危機」の時代の思想家を読むも同様。これは購入してじっくり読まないとね。

タツラーとしては養老孟司の大言論〈2〉嫌いなことから、人は学ぶ (養老孟司の大言論 2)は巻末の対談が短くて残念。通勤時に読み終わってしまったので、14歳の子を持つ親たちへ (新潮新書)を買って読む。ふむふむ、勉強になります。

基礎から始める 渓流釣り入門 (つり情報BOOKS)。これを眺めながら奥多摩へ夢を馳せる。まずは上州屋に行かないと。

June 10, 2011   No Comments

dream voice

徳川夢声のくらがり二十年で一番印象に残ったところ。はじめての映画館経営に四苦八苦する中、糖尿病で入院を余儀なくされた夢声がポツリとつぶやく。

おまけに、退院すると間もなく、可愛い盛りの娘を、消化不良と麻疹(はしか)の合併症で亡くして了った。豈(あ)に飲まざるを得んやデアル。

全編これ軽妙洒脱な文章が綴られていくうち、突然でてくるこの文章にびっくらこいた。現代に比べると、昔は子どもが亡くなることが多かったらしいが、それでも自分の子どもがデアル、とは。逆にそのインパクトの強烈さを感じてしまった。涙で語るのではなく、笑い顔で言うからホントの悲しみが伝わるのか。

生きのびろ! 生きづらい世界を変える8人のやり方雨宮処凜の本は初めて。同時期に平川克美の移行期的混乱―経済成長神話の終わりを読んでいたので、期せずして、この困難な時代を生き抜くためのヒントを、異なる視点から語った本をほぼ平行して眺めていたことになる。そして、これは一緒に読まれるべき本たちだと思った。平川の本だけ読んでも、じゃあ具体的にどう生きりゃいいのよ、という疑問が出てくるし、雨宮本だけでも、何だみんな好きなことやって生きられていいね、てなことになりそう。もしくは原因と結果というべきか。

そして、アタシは平川の本にとても感銘を受けてしまった。経済成長神話の終わりを説いているが、その姿勢はつねにポジティブなのだ。けっして安易な希望的観測並んでいるわけではない。高齢者医療に関する記述など読むと、お先真っ暗としか思えない。だが、それでも豊かに生きる方法はあるはず、と。

February 17, 2011   No Comments

Trad

クリスマスの夜にワイン呑みすぎて、子どもたちより早く寝てしまった。翌朝6時前に目が覚めて、食卓には昨夜の飲み残しのボトルが寂しそうにたたずんでいるので、せっかくだからと、お湯で薄めて飲みながら、近所の古本屋にて300円で買っておいた山中貞雄の「人情紙風船」DVDを観る。眠くなったら二度寝でも、と思ってたのとはうらはらにドンドン引き込まれ、気がついたら子どもたちが起き出してきたので、流れで一緒に朝食。ツマミもなかったし、腹減ってたのでちょうどよかった。

アタシが言うまでもないですが、すばらしいです。もちろん人情紙風船の方です。映像の粗さは仕方ないとしても、とても1937年制作とは思えません。ついでにこれが山中貞雄28歳、しかも結果的に最後の作品となってしまったいうのにもうならされました。長屋の宴会で住人たちが刺身を食べるシーンには、時代考証的に??でしたが、そんなことどーでもいいことです。こんなサイトが作られるのも納得できます。この才能が戦争によって失われたのは、大きな損失だったに違いありません。

図書館の子ども向けコーナーに行くと、現代語訳された古典が結構あって、最近はここからテキトーに選ぶことも多いです。そんな中、決定版 心をそだてる はじめての落語101 (決定版101シリーズ)という、子どもたちのために翻案してある古典のスタンダードが101篇。これすごく良かった。金原端人ほか二人の翻訳家とイラストレーターで取り組んだプロジェクト。いってみれば有名小説ののあらすじ集みたいなものだけれど、実際子どもたちのために朗読してたら爆笑してしまい続行不能となったネタもあり、あなどれない。もともと筑摩文庫の落語シリーズに始まって、最近だと「談志の落語」まで、じっさいに高座に足を運ぶ前にテキストで満足してしまうアタクシが言うのもどうかと思うが、日本の誇る話芸のエキスを子どもたちに注入するのに「はじめての落語」は適役だと思う。

古典と言えば、近松、西鶴とか紫式部など名前だけは知っているけど、読んだことがない有名作家が多いよなあとずっと気になっている。長い歴史を通じて遺されているのだから、きっと面白いに違いない。もちろん、オリジナルはかなと漢字で書かれているから読めるには読める。漢詩を読み下すよりずっと楽なはず、が、いかんせんめんどくさいので、現代語訳 曾根崎心中 (河出文庫)とか、窯変 源氏物語〈1〉新編日本古典文学全集 (66) 井原西鶴集 (1)など手にしてみて、こりゃ子どもにゃ分からんわと結論した。とにかく男女関係のもつれと柵(しがらみ)がメインのテーマなのだから。

古典に触れるのには若いときの方がいいと思うのは錯覚なのだろうか。爺になって骨董が好きになるようなものなのか。それとも青山二郎とか白州正子がおしゃれすぎるのか。

December 29, 2010   No Comments